11月の3連休の初日、宮城県仙台市にある「ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所」に行ってきました。
私は大のワイン好き(日本酒やビールetc.も好き)ですが、ウイスキーは年に数回飲む程度の初心者です。
そんな私ですが、仙台在住の友人と日帰り観光しよう!ということになり、「最近ウイスキー美味しいかも♪と思い始めたところだし、せっかくなら蒸溜所見に行くのもいいかもね~。テイスティングセミナーもやってるみたいだし!」ということで、行き先に決定しました。
2週間ほど前にホームページからテイスティングセミナー付き見学ツアーの予約をしました。
通常の見学ツアーは無料なのですが、テイスティングセミナー付きの場合は1,000円の参加費がかかります。
作並駅に到着
10:00〜の見学ツアーに合わせて、9:04発の電車で仙台駅を出発し、9:40作並駅に到着しました。
作並駅に着くと、雪が降っていました。
作並も仙台市内ではあるのですが、やはり山間なので仙台駅前よりだいぶ寒いです。
ウルトラライトダウンをバッグに忍ばせておいてよかった…。
作並駅前には、電車が着く時間(大体1時間に一本)に合わせて、蒸溜所行きの無料シャトルバスが待機しています。
片道所要時間は約7分です。
9:47発のバスに乗る予定だったのですが、人数が多く一台に乗り切れませんでした。
またすぐ折り返してくれるということなので、しばし待ちます。
ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所
10:10頃、バスがやってきました。
5分ほどで蒸溜所に到着です。
受付で参加費1,000円を払い、首から下げるカードを受け取り、セミナールームに案内されます。
すでに10時からの見学ツアーが始まっている時間だったのですが、私たちのバスが到着するまで待っていてくれたようです。
全員席に着くと、まず蒸溜所を紹介する映像を視聴しました。
1967年、この地を訪れた竹鶴政孝氏は、新川(にっかわ)の水でウイスキーを割り、ひと口飲んで蒸溜所建設を決めたのだとか。
スコッチの「ローランド」と同じ、穏やかなモルト原酒づくりを目指していた彼にとって、やわらかな水はもちろん、一年を通じて湿潤な気候もまさに理想的でした。
竹鶴氏が認めた新川の水を、グラスに注いで飲んでみます。
日本でよく飲まれているミネラルウォーターの硬度は30度~くらいですが、新川の水の硬度は20度だそうです。
たしかに、普段飲んでいるミネラルウォーターよりも、口当たりがやわらかい感じがしました。
ウイスキーづくりには、新川の水を磨いて使用しているのだそうですよ。
次に、ウイスキーの原料であるピートで燻した麦芽が入ったケースを回してくれるので、香りを嗅いでみます。
「おぉ…これぞウイスキー…」という香りです。
燻製のような、正露丸のような…(一口にピート香と言っても、色々違いがあると思うのですが、そこまで嗅ぎ分けられませんすみません)。
ピート(泥炭)とは、モルトウイスキーの香りを特徴づける重要な材料で、麦芽を乾燥させる際に使用します。
ちなみに、ウイスキーに使用する麦は二条大麦で、麦茶に使用されるのは六条大麦です。
六条大麦は蛋白質が多いので、お酒を造ると濁りの原因になってしまうので、お酒造りには二条大麦が好まれるようですよ。
蒸溜所見学ツアー
さて、テイスティングの前に、蒸溜所の見学に出発です。
ビジターセンター(ポットスチル)
ビジターセンター内にあるポットスチル(単式蒸溜機)は、連続テレビ小説「マッサン」の撮影に使われました。
撮影にあたって、テレビ局の方が表面をピカピカに磨いてくれたそうです。
そんな裏話を聞けるのも見学ツアーならでは。
蒸溜棟(カフェ式連続式蒸溜機)
カフェ式連続式蒸溜機では、トウモロコシを主原料とするグレーンウイスキーがつくられています。
今ではスコットランドでも珍しい蒸溜設備です。
簡単に言うと、その設備の中に、単式蒸溜機の仕組みがいくつも入ったものです。
より効率的にアルコール度数を高めることができます。
操作が難しく、アルコールを精製する効率も劣るのですが、原料の香味が残るので、ウイスキー本来の美味しさが引き立つのだそうです。
残念ながら、内部の見学はNGだったのですが、先ほどのセミナールームでも見学前にスライドショーで仕組みを解説してくれたので、内部がどんな感じになっているのかなんとなく想像ができました。
乾燥棟(キルン塔)
キルン塔は、現在は使われていないのですが、麦芽を乾燥するための建物です。
前述の通り、ピートで麦芽を燻し、ピート香を麦芽に染み込ませます。
キルン塔の中に入ってみます。
このなかで麦芽を燻していたのですね~。
麦芽を燻すためのピートの塊が置いてあったので、実際に手に持ってみました。
触った感じは固く、意外なことに香りはしませんでした。
火にくべると香りが立ってくるのでしょうね。
仕込棟(糖化・発酵)
仕込棟では、ウイスキーを蒸溜する前の、糖化・発酵が行われています。
糖化・発酵は、最新のコンピュータで24時間体制で管理されています。
コンピュータルームは撮影禁止だったのですが、たくさんの画面が並んでいて、これぞ管理室!といった感じでしたよ。
こんなハイテクな設備が使われているとは意外でした。
蒸溜棟(単式蒸溜機)
次に、蒸溜棟(単式蒸溜機)を見学します。
単式蒸溜機は、ポットスチルとも呼ばれます。
スチームでじっくりと時間をかけて蒸溜します。
モルトウイスキーは、2回蒸溜を行いアルコールを取り出しています。
ポットスチルに飾っているしめ縄は、よいウイスキーができるように、毎年付け替えて祈念しているのだそうですよ。
製樽棟
製樽棟では、ウイスキーを貯蔵するための樽を作っています。
残念ながらこの時は作業をしていなかったので、その様子を見ることはできませんでした。
樽はすべて手作りで、樽は3~4回、50年間ほど使用されますが、 この間にも必要に応じて補修が行われます。
新樽や、世界中から集めた樽を作りかえ、ブレンダーが求める理想の樽に仕上げるのだそうですよ。
蒸溜所と自然
蒸溜所は、できるだけ自然の地形や森林を残してつくられたのだそうです。
すがすがしい空気に包まれる、うっすらと雪が積もる草木とレンガの建物。
「素敵な景色ねー」といいながら写真を撮っている方も多かったです。
貯蔵庫
通常の無料の見学コースでは中に入れないのですが、有料テイスティングセミナー付きの見学コースでは、特別に中に入ることができちゃいます。
木のレールを敷き、土の上に樽を並べているのですね。
この土地の冷涼で湿潤な自然をウイスキーが存分に吸い込めるようにとの配慮かららしいですよ。
上の写真の樽は、ブランドに重要な、一番古いウイスキーが入っているのだそうです。
樽にも種類があります。
左奥から時計周りに、もともとビールやスピリッツの熟成に使われていたパンチョン、スペインでシェリー酒の貯蔵用に使われていたシェリーバット、バーボンウイスキーの熟成に一度使用したバレル、バレルを解体し側板を増やし胴径を大きくしたホグスヘッドです。
それぞれ熟成の速さや香りが異なるそうですよ。
空樽置場
貯蔵庫の外には、使わなくなった樽が積み上げられていました。
テイスティングセミナー
見学から戻り、いよいよ待ちに待ったテイスティングセミナーです。
左手前から時計回りに、①モルティ&ソフトタイプ、②フルーティ&リッチタイプ、③シェリー&スイートタイプ、④ウッディ&メロウタイプ(カフェグレーン)、⑤シングルモルト宮城峡です。
テイスティングの方法
1、グラスにウイスキーを注ぎ、色を見る。
2、グラスを持ち上げ、静かに香りをかぐ(トップノート)。
3、グラスの中のウイスキーを軽く回して、グラスの壁面に広がるようにして再度香りをかぐ(ベースノート)。
4、ウイスキーと同量の水を加え、新たに立つ香りをかぐ(トワイスアップ)。
ワインのテイスティングと同じ要領ですね。
ただ、ウイスキーの場合は、水を加えると香りが立ってくるというのは知らなかったです。
たしかに水を加えてみると、香りがより芳醇になるのを感じました。
①モルティ&ソフトタイプ
ブレンドにおけるモルト部分のベースになる原酒です。
穏やかにピートのかかった麦芽を使用し、リフィル(再利用)樽で熟成しています。
〈香り〉モルティーな柔らかい甘い香りと、軽快なフルーティーさ
〈味わい〉麦の香ばしさと甘くシルキーで軽やかな味わい
〈余韻〉暖かでやさしい麦の甘さ。穏やかで心地よい余韻
スタンダードなウイスキーといった感じでしょうか。
麦やトースト香を感じました。
穏やかに見せかけて、味わいは意外とキツイ感じもしました。
②フルーティ&リッチタイプ
フルーティな香りを生み出す独自の酵母で発酵させ、宮城峡蒸溜所のスチーム加熱式のポットスチルで蒸溜したモルト原酒を、さまざまなタイプの樽で熟成させヴァッティング(ブレンド)したものです。
〈香り〉華やかで濃厚なメロンやバナナ、桃を思わせる豊かな果実香
〈味わい〉スムーズでリッチ。甘酸っぱさとほのかなほろ苦さ
〈余韻〉甘美な余韻と少しビターな後味
グラスに顔を近づけてみると、ふわっとフルーツのような香りがしました。
エステル香のような・・・。
先ほどのモルティ&ソフトタイプに比べると優しい味わいな気がします。
意外とビターな感じもしました。
③シェリー&スイートタイプ
宮城峡蒸溜所の原酒を、シェリーの貯蔵に使用した樽で貯蔵・熟成した原酒をヴァッティング(ブレンド)したものです。
〈香り〉熟した果実のフルーティーな果実香とレーズンや干しいちじくを思わせる甘い香り
〈味わい〉ジューシーで甘酸っぱい口当たり
〈余韻〉柔らかなふくらみのある甘さと少しビターな余韻
私は、この香りが一番好きでした。
シェリー酒っぽく、レーズンの香りを一番強く感じました。
口に含むと、ぶわあっとアルコールが口の中や喉の奥に広がり、濃いな~というのが感想です。
⑤シングルモルト宮城峡
④ウッディ&メロウタイプ(カフェグレーン)を紹介する前に、⑤シングルモルト 宮城峡について触れたいと思います。
シングルモルト宮城峡は、上記の①~③のモルト原酒をブレンドしてつくられています。
〈香り〉りんごや洋梨のようなフルーティーさ、甘く華やかな花の香り、樽由来の柔らかなバニラ香
〈味わい〉ドライフルーツのようなスイートさ、滑らかな口当たり
〈余韻〉モルトの甘みと樽香が優しく広がる柔らかな余韻
香り、味わいなど、とがったところがなく、なるほどうまく調和がとれているなあと思いました。
①〜③それぞれのキーモルトのいいとこどりをしたな♪という感じで、とても飲みやすいです。
文句なしに美味しいです。
④ウッディ&メロウタイプ(カフェグレーン)
ニッカ カフェグレーンは他の原酒とは原料が異なります。とうもろこしを主体とし(1割大麦、9割とうもろこしだそうです)、カフェ式連続式蒸溜機で蒸溜されたグレーン原酒を、さまざまな樽で貯蔵したものをヴァッティング(ブレンド)したものです。
〈香り〉柔らかでバニラを思わせる甘い香り
〈味わい〉樽のウッディな味わいと穀物の滑らかな甘いコクのある味わい
〈余韻〉穏やかな樽の余韻と甘く香ばしい後味
私はこのカフェグレーンも、まろやかで、バニラ香(バニリン)や香ばしさもあり好きでした。
どうしてもワインの好みと似てしまう・・・。
香りと味わいをトータルでみると、これが一番好きかもしれないです。
・
・
・
それぞれのウイスキーの香りを嗅いでみると、素人でも「違う!」とわかります。
ウイスキーの香りにこんなにも違いがあるとは知らなかったので、新鮮な驚きでした。
それぞれのグラスを味わったあと、残ったウイスキーで自分の好きなようにブレンドして楽しんでみてくださいとのことだったので、いろいろな組み合わせを試してみました。
試してみた結果、やはりプロのブレンダーが仕込んだ⑤シングルモルト宮城峡か、④カフェグレーンそのままが美味しいかな・・・と思いました。
もしくは③シェリー&スイートを多めにブレンドしたものが好みですかね。
いろいろと味わっているうちに、気づけばほとんど飲み干してしまいました。
終盤はほろ酔いで楽しい気分に。笑
クリームチーズおかきとチョコレートのおつまみもセミナーを受けながらいただきましたが、ウイスキーにとても合うので、さらにお酒が進みます。
ビジターセンター内の展示
ビジターセンターでは、ウイスキーの製造工程やニッカの歴史などの展示を見ることができます。
余市蒸溜所と宮城峡蒸溜所との違いも紹介していました。
余市のウイスキーは力強いイメージなんですね。いつか行ってみたいです。
試飲コーナー&ショップ
ショップの横には、試飲コーナーもあります。
見学のみでテイスティングセミナーを受けなかった方は、ここで宮城峡のウイスキーを味わってみるのもいいかもしれませんね。
ショップは時間があまりなくほとんど見られなかったのですが、実家へのお土産に、ニッカ アップルワインを購入しました。
一緒に行った友人のおすすめです。
甘いお酒はあまり得意ではないのですが、甘いだけではなく、いい感じにアルコールも感じるので、ぐいぐいいってしまいました。
梅酒のようなノリで、ロックにすると美味しかったですよ。
テイスティングセミナーで飲んだ、キーモルト3種セットも売っていましたよ。
お家で自分好みにブレンドして楽しめますね。
まとめ
今回、テイスティングセミナーで一緒になった方々は、ウイスキー愛好者ばかりで(中には毎日晩酌で飲まれる方も)、ウイスキーど素人は私たちだけだったのですが、とても楽しめました。
奥深いウイスキーの世界を垣間見ることができ、今後の人生を楽しむ手がかりをひとつ得られたような気がします(言い過ぎ?)。
ウイスキーがお好きな方はもちろん、ウイスキーが最近ちょっと気になるんだよね・・・という方も、気軽に足を運んでみてくださいね。